亮月だより

2026.1.16(金) 1428 葉っぱ一枚あればいい 

【亮月写植室】写植室の大掃除と写植機の整備を終えたので、室内の備品を拡充した。


Nikon D800・Ai AF-S Zoom-Nikkor 28-70mm F2.8D(IF)(以下同じ)

 EMPEXの「サーモグランデ300」ことTM-2378
 写植室は普段は居住しておらず空調は掛けていないのでかなり寒くなる。その為廊下から写植室へ入らずに温度と湿度を確かめたく、直径30cm以上の大型で精度が高い温湿計を探した。
 大型温湿計は各社から多数発売されているが、シンプルで機能美に徹したものは本機とGRUSの「GRS105」ぐらいだった。GRS105はとても見易く実用的だがその分文字盤の主張が強く常に温度が気になってしまうので、自宅の雰囲気に馴染む穏やかな表情のTM-2378を採用した。大型温湿計としては限界まで削ぎ落とされた意匠でありながら機器としての本質的な美しさも兼ね備えていて、大きいのに存在感がない所がいい。

 ナショナルの電磁式振り子時計「NBC-101」とアナベルの自家製ドライフラワー(再掲)。65年も前の時計なのに、現代の住まいの価値観に無理なく溶け込む普遍性。新しい古いなんて陳腐な物差しは捨てて、何があったらいいか、何をしたらいいかだけを考えていこう。そんな思いを密かにこの場所へ込めた。

 写植室は100Wの白熱電球1燈だけではやや薄暗かったので、ダクトレールを活用してヤザワのセード付きスポットライトを装着、60W相当のLED2燈を補った。見違える程明るく色鮮やかになり、写植室が活気づいたと思った。自宅の設計時、無理を言って高い位置にダクトレールを設けてもらった当時の自分の見通しは間違っていなかった。

 写植機の裏側の壁にはCreemaで調達したユーカリのスワッグをあしらった。

 自宅の竣功からこれまでずっと薄暗く作業場然としていて味気なかった写植室が、重厚な機械の傍に植物があるだけで生気を纏ったような気がした。葉っぱ一枚あればいい、と口遊(くちずさ)んでちょっと元気になった。


2026.1.12(月祝) 1427 写植の為なら 

【亮月写植室】丸一日掛けて、とても久し振りに写植室の大掃除をした。
 床にある物を全てどかして掃除機を掛けているうちに写植機に埃や錆の浮き、黴が付着していることに気が付いた。長い間写植から離れていたことでこのようになってしまっていた。申し訳なかったと思いながらクレンザーやアルコールを駆使して可能な限り磨き上げた。元通りにはならなかったが。


富士フイルム X20(以下同じ)

 外観は概ね綺麗になったが、今度は内部が心配になった。黴だらけになってはいないかと。

 操作パネルを開けたところ。黴や錆が廻っている様子はなかった。

 主レンズを100Qにしてファインダーに投影したところ、文字が鮮明に結像せず曇ったようになっていた。埃が溜まってしまったようだ。2011年にこの写植機を譲り受けた時も初めて現像したところ濃度が出ず、レンズの埃が原因だった。
 上の写真では下から主レンズ(Q数)、JQレンズ(補助拡大)、そしてダイヤルの上に変形レンズ(平体・長体・斜体)のターレットが見える。

 まずは主レンズターレットの上にあるJQレンズを表裏とも磨く。横から伸びている爪を手で外してターレットを回し、全てのJQレンズを磨いた。

 続いて変形レンズを裏から見たところ。本来透明な筈のレンズ面が白っぽくなっており、埃が溜まっているのが分かる。これも全て拭いた。左下の傘歯車は変形レンズダイヤルに動力伝達していて、キーボードで変形レンズを選択すると「ニ゛ンニヾヾヾ……」と噛み合うような音を出しながらダイヤルが回る。

 文字盤の下には光源ランプが収められており、文字盤のすぐ直下には大きな第2コンデンサーレンズ(集光レンズ)が固定されている(→詳しい仕組み)。
 文字盤側は拭けるがその裏側は固定された函の中なので拭けず、埃が残ったままだ。光源に最も近い第1コンデンサーレンズと切換コンデンサーレンズはレンズ同士やその手前にある採字マスクとの距離が短く、眼鏡拭きのような薄い布を畳んで押し込んでも拭き残しが出てしまった。

 続いて主レンズ。光源ランプの光は第2コンデンサーレンズから本来は文字盤を通って文字の形となり、主レンズで文字の像の大きさを変える(写真は文字盤が文字枠に乗っていない状態)。主レンズも上面と下面を拭いた。割り箸にシリコンクロスを括り付けて耳掃除のように拭いた。

 最後に機種のエンブレムの側面にある蓋を開け、変形レンズの上面を拭いてレンズの掃除が完了!

 試し印字すら本当に久々だ。それでも体は写植機の操作や文字盤の配列を憶えていて、何事もなく思い通りに印字できた。まるで廃業した写植オペレータが何十年振りに写植機に向かった時、昨日も仕事をしていたかのような慣れた手捌きで操作して印字していくようだった。私は写植オペレータになりたかったんだなとしみじみ思った。

 一日の終わりに打ち上がった写植の印画紙。
 印画紙は黒白写真用の「イーグル」(オリエンタル写真工業株式会社製)の大カビネ判(2L判)。寒かったからか、現像液に入れて数分待ってからやっと黒い文字が浮かび上がってきてほっとした。写植機は無事のようだ。レンズは10Qと12Qがまだ曇っているようで極端に細く印字された。65ノッチではやや薄く、75ノッチでは露出オーバーだったので70ノッチ辺りが適正露出だろう。

 一日写植のことで夢中になれたのはいつ振りだろう。写植の為なら室の大掃除も写植機の磨き上げもレンズ拭きも全く厭わない。寧ろとても楽しかった。何かを摑み始めたような気がした。


2026.1.11(日) 1426 庭の贈り物 

【園芸部+日録】天気の良い土曜日。恒例となった庭作りに精を出すことにした。


富士フイルム X20(以下注記があるもの以外同じ)

 写研書体で印字したテプラを黒い園芸ラベルに貼る。今回は樹木用に縦型を用意し、書体は「ゴナB」にした。こうして写研書体を写植機以外から出力することを日常のことのように書くのは、今でも不思議な気がする。
 ゴナはどうしてもツメツメで組みたくなる。文字毎にバランスが良く、気持ち良く納まるからだ。こうして印字してみると駅名標のように見えてくる。かつての名古屋市営地下鉄のサインシステムのような気品がある。

 庭で採取したアナベルの枯れた花。これを紐で括って……

 自家製ドライフラワーにした。一度こういうことをしてみたかった!


富士フイルム FinePix S5Pro・SIGMA 18-35mm F1.8 DC HSM

 写植室に掛けたナショナルの電磁式振り子時計「NBC-101」の隣に飾ると色合いが丁度良く、如何にも作業場のようだった写植室がぱっと華やいだ。この方向性を目指して「写植カフェ」のようにしてもいいかもしれない。

 縦型の園芸ラベルを木に括ってみた。読み易くも目立たない。思惑通りだ。
 ここで昼食を挟み、午後は自宅に必要な備品を買いに最寄りの「ニトリ」へ行った。道中吹雪が始まってしまい、必要なものだけ購入して蜻蛉返り。

小判皿」のグレー、唐茶削ぎ、ネイビー。副菜をふた品盛るのに丁度良い大きさだ。
 唐茶削ぎは我らが美濃焼だった。地元で売られている美濃焼は何故かこのようなシンプルなデザインのものは極めて少なく、旧態依然の派手な柄物が幅を利かせている。美濃焼が何故衰退してしまったのか、そしてどこに活路があるのかがこの小さな器から解った。

 同じ日とは思えない程の大雪だ。常緑ヤマボウシ(ホンコンエンシス)にひっそり揺れる黒ラベル。

 夜になると一面綿帽子の世界。空は明るく視界が利く。不思議なメルヘンの世界になった。




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