岩田細明朝体
見本は「イワタ明朝体オールド」を使用しています


●イワタ 不詳

●読書の水先案内人

 金属活字時代から書籍の本文に使われてきた「岩田細明朝体*」。本好きの方にはお馴染みの書体ではないでしょうか。

 この書体は、1920年に創業した「岩田母型製造所」によって、金属活字として製造・販売されました。戦後は活版印刷からオフセット印刷へと徐々に移り変わっていき、1960年代にはそれに呼応するように、写植機メーカーの写研とモリサワから文字盤として発売されました。そして21世紀を前後してパーソナルコンピュータ用のデジタルフォント「イワタ明朝体オールド」としてリメイクされ、ウェイト(文字の太さ)展開を果たし、現在に至っています。

 岩田細明朝体の特徴は、仮名の独特なデザインにあると思います。一般的な明朝体のように楷書をイメージする仮名ではなく、右へ左へとうねるように描かれ、ときには画線と画線が連続している形状のため、一文字一文字に表情があり、かつ古風で落ち着いた印象があります。

 また、文字ごとに起伏があるので判読の手がかりになり、長文を読んでも疲れにくいと思います。「ヒラギノ明朝体」が写真の多く入った雑誌の本文を想定したヴィジュアル的な“見る”書体であるとしたら、「岩田細明朝体」は文章をじっくり“読む”ための本文書体であると言えると思います。

 岩田細明朝体は冒頭のように、非常に多くの書籍の本文に採用されています。写植の時代に入ってからはレンズによって文字の拡大・縮小ができるようになったため、現在では見出しや表紙のタイトルに使われることもあります。用例は数えきれない程ありますが、この書体が使われている本では「クラフト・エヴィング商會」の作品が一番好きです。

 活字時代から殆ど形を変えずに生き抜いてきた定番書体。これからも読書の水先案内人としてずっと活躍していくことでしょう。本を自作される方にも非常にお薦めです。

*岩田細明朝体
 写研の写植機での書体名ですが、写植好きの管理人は今でも「岩田細明朝体」と呼んでいます。

●同デザインの書体名とファミリー

○pt/○号明朝(岩田母型製造所/金属活字) 不詳
岩田母型細明朝体(モリサワ/写植) 1965
岩田細明朝体ILM-A(写研/写植) 1968

イワタ明朝体オールド(イワタ/デジタルフォント) 2001頃
イワタ中明朝体オールド(イワタ/デジタルフォント)
イワタ太明朝体オールド(イワタ/デジタルフォント) 2004.11.30


2005.8.24

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